第1話:インターネットでの通信を
無条件に信用していませんか?

インターネットの利用は、この10 年ほどで爆発的に増加しました。

今や企業では電子メールやLAN、ウェブブラウザなどがなかった ら、まったく仕事にならない、というところがほとんどでしょう。オ ンラインショッピングのような商品の売買から、製造業での資材調 達、社員研修などもインターネットを介して行われることが普通に なりました。

しかし、インターネットの普及にともなって、インターネットにかか わる犯罪やトラブルも非常に増えてきました。

では、どのような原因によって問題が起きるのか考えてみましょう。

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なりすまし

その通信相手はたしかに「本物」なのか?

インターネットの特徴として、情報をやりとりする相手が「本人なのか」を確かめるのが非常に難しいことが挙げられます。たとえば、インターネットで個人を特定する方法には、ユーザーIDやパスワード、メールアドレスなどがあります。

これらは電子データですので、元とまったく同じコピーが簡単に作れます。このため、ユーザーIDやパスワード、メールアドレスなどが悪意のあるハッカーに入手されてしまうと、本来の持ち主のふりをして情報をやりとりできてしまうのです。

不正に利益を得るために、他人のふりをすることを「なりすまし」といいます。

最近「なりすまし」の事案として問題となっているのが「フィッシング詐欺」です。これは、有名な銀行やショッピングサイトなどを装った電子メールや、本物そっくりに作ったホームページを使って、個人情報やクレジットカード番号などを入手しようとするものです。

フィッシング詐欺は、情報の送信者が「本物」であることを確かめるのが難しい、インターネットの弱点を悪用した不正行為です。

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改ざん

書き換えられたメールを受け取っていませんか?

インターネットで本物とニセモノを区別しにくいのは、情報をやりとりする相手だけではありません。

たとえば、ある人がオンラインショップあてに、商品の発送を依頼する電子メールを送る場合を考えてみましょう。ハッカーがこの電子メールを途中で横取りし、商品の発送先をハッカーあてに書き換えたメールをオンラインショップに送ったらどうなるでしょうか?

このように、作成した本人以外の第三者によって電子データが勝手に書き換えられてしまうことを「改ざん」とよびます。改ざんは、インターネット上で情報を受け取ったときに、その情報が途中で変更されていることを発見するのが難しいことを悪用した手口です。

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事後否認

「言った」、「言わない」はインターネットにもある?

電子データは改ざんすることが容易であることに加え、削除してしまうと痕跡がまったく残らないという特徴があります。このことを悪用した手口に「事後否認」があります。

ここでは、機械製造メーカーと部品メーカーのやりとりを例に説明します。事後否認とは、次のようなケースです。

  1. 機械製造メーカーは部品メーカーに仕様書を送り、部品の製造を発注する。
  2. 部品メーカーは仕様書通りに部品を製造して、機械製造メーカーに納品する。
  3. 納品後、機械製造メーカーは納品物が仕様書通りではないと主張する。

機械製造メーカーは、誤った仕様書を送ったのかもしれません。しかし、電子データは改ざんや削除が簡単に行えてしまいますので、機械製造メーカーは、「その仕様書は何者かによって改ざんされたものだ」とか「そんな仕様書は見たことがない」などと言い張ることができてしまいます。

このように、当事者のどちらかが、情報をやりとりした事実を否定したり、情報の内容が改ざんされていると主張したりすることが「事後否認」です。今のケースだと、機械製造メーカーが事後否認をしていることになります。

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盗聴

あなたがやりとりしているメールやファイルは盗み見られている?

「本物とニセモノを見分けるのが難しい」ということのほかに、インターネットでトラブルが起こる原因はまだあります。それは、インターネットでやりとりされる情報は、第三者に見られる可能性があるということです。

インターネットで情報をやりとりすることは、現実の世界では「ハガキで連絡をとりあうこと」に似ています。ハガキはとても手軽で安価に手紙を相手に送ることができる通信手段です。しかし、ハガキは見ようと思えば、書いてある住所や氏名だけでなく、伝えたい情報の内容まで読むことが誰でもできます。ハガキは、書いた人と送り先の人だけではなく、各拠点の配達担当者や郵便局の仕分け担当者など、非常に多くの人の目に触れる可能性があります。

インターネットもこれによく似ています。電子メールやウェブブラウザなどを使って通信される情報は、多くのサーバーを経由したり、様々な通信経路を辿って届けられます。実は、ある程度の技術をもった人ならば、サーバー上に保管されている情報や通信経路上を流れている情報を誰にも知られずに読み取ることが可能なのです。

この特性を悪用した手口がインターネットで行われる「盗聴」です。現実の世界で行われている盗聴のように音声の会話を傍受するわけではありませんが、本来の通信相手以外の第三者に通信内容を盗み見られてしまう、という点はとてもよく似ています。

第1話 まとめ

インターネットを利用する上では、「通信相手は本当に正しい相手なのか?」、「重要なデータをそのまま送信しても大丈夫なのか?」といったことに気をつけましょう。なりすまし、改ざん、事後否認、盗聴といった手口による不正行為によって、誰でも被害にあう可能性があります。