CertCentral 07-12-2022

NIST が最初の量子耐性暗号化アルゴリズムの選定を発表

Timothy Hollebeek
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量子コンピュータはインターネットを破壊するかもしれません。これは正確ではないですね。しかし、量子コンピュータは、インターネットを保護するために現在使われている暗号化アルゴリズムを破れるかもしれません。このために、NIST は従来型コンピュータと量子コンピュータの両方で耐える見込みのある暗号化アルゴリズムをレビューし続けてきました。

量子コンピュータは 1、2 年後には実現しませんが、10 年後か 20 年後には確実に実現します。つまり、この先 10 年か 20 年の間に、インターネット上のすべての安全な通信プロトコルは、NIST の標準化アルゴリズムを組み込むようにアップデートする必要があるということです。この発表は、NIST の標準の実施時への準備を開始するときが来たことを示しています。

NIST 最終的な主要アルゴリズムを選定

NIST は 2016 年以来、標準化の見込みのある暗号化アルゴリズムをレビューし続けてきました。それ以来、アルゴリズムの候補がいくつか提案されてきました。最有力の候補を用いて各段階からさらに進展させ、数段階のレビューが行われてきました。デジサートを含む世界中のさまざまな機関の専門家が一連のカンファレンスで集まり、選定されたアルゴリズムをレビューしました。

6 月 5 日に、標準化のための主要な選択肢として 4 つのアルゴリズムを選んだことを NIST は発表しました。これには以下のものが含まれます。

一般の暗号化向け(公開鍵暗号化/KEM)

  • CRYSTALS-KYBER

電子署名向け

  • CRYSTALS-Dilithium
  • Falcon
  • SPHINCS+

ただし、将来主要アルゴリズムに問題が見つかった場合に備え、NIST は見込みのあるバックアップアルゴリズムも 2 つまで選定します。第 4 ラウンドでの提案は 2022 年 10 月に終結し、11 月 29 日から 12 月 1 日の間に 4 回目の NIST PQC 標準化カンファレンスで標準化についての最終決定が下されます。

発表によると、NIST PQC チームは次のように述べています。「NIST は、この標準化プロセスにおけるコミュニティとすべての提案チームの努力に対し感謝の意を表します。次の段階に選ばれなかったスキームの提案チームが、暗号化コミュニティ全体と協力して残りの暗号化システムを評価、解析することで参加し続けることを希望します。こうした努力の組み合わせは、NIST の将来の耐量子公開鍵標準の開発にとって極めて重要です。」

選定プロセスの詳細は、 NIST PQC Web ページNIST 耐量子コンピュータ暗号標準化プロセス第 3 ラウンドでの NIST ステータスレポートをご覧ください。

量子コンピュータからの保護に新しいアルゴリズムが必要な理由

現在使われている非対称の暗号化アルゴリズム(RSAECC)には、十分に強力な量子コンピュータによって危殆化される脆弱性があります。こうしたコンピュータは現在存在しませんが、10 年か 20 年の間に出てくるでしょう。新しいアルゴリズム(耐量子コンピュータ暗号、または PQC と呼ばれる)は、量子コンピュータと従来型コンピュータの両方にとって解決が難しい数学的問題に基づき、この脅威に対応するために開発されました。NIST は、これらのアルゴリズム候補を評価して、適切なレベルのセキュリティを備えていることを確認する取り組みを率いてきました。

これらのアルゴリズム実現のタイムラインとは

PQC への移行は、インターネットで試みられたセキュリティアップグレードの中で最大のこととなります。PQC に対し十分な準備をするには数年かかる可能性があるため、できる限りスムーズに移行が進むようにすべての人が協力して支援することが重要です。耐量子アルゴリズムへの移行の開始時期は、組織、ならびに暗号化アルゴリズムをどのように使用しているかで決まります。

ただし、標準を最終決定するまではこれらのアルゴリズムは変更される可能性があるため、システムに完全に移行するのはまだ時期尚早だと NIST は提言しています。アルゴリズムが選定されたので、これらをどのように安全に実装、テスト、導入する必要があるかを記載した標準文書が必要です。このため、NIST が標準を実装するまでに約 2 年かかるでしょう。

同時に、暗号ライブラリとセキュリティソフトウェアの実装者は、これらのアルゴリズムの自社製品への統合を開始する必要があります。初期の実装のいくつかはオープンソースプロジェクトとして存在しますが、最も広く使われている暗号ソフトウェアライブラリとハードウェアはまだ新しいアルゴリズムをサポートしていません。選定されたアルゴリズムが標準化されたら、急速に変わると予想しています。

加えて、従来型暗号化アルゴリズムのユーザーは、これらの新しい PQC アルゴリズムを自分たちのソフトウェアに組み込む方法を、今から探し始める必要があります。新しいアルゴリズムは従来型アルゴリズムの一時的な代替品ではないためです。新しいアルゴリズムに対応する暗号プロトコルを再設計するための作業が必要になります。

さらに、 TLSIPSec、さまざまな PKI 標準などの標準グループが保守しているプロトコルにも、新しいアルゴリズムを組み込む必要があります。幅広い標準グループが複数年にわたって取り組むことになります。

検出から始める

NIST は、公開鍵方式を使用しているシステムとアプリケーションを検出し、置換する必要があるもののインベントリ作成から始めることを推奨しています。これは今できることです。デジサートは、証明書インベントリの管理をするためのさまざまなディスカバリーツールを提供しています。現在、ほとんどの組織は証明書の全体像を完全にリアルタイムで把握していません。しかし、デジサートのディスカバリサービスのようなツールを使うことで、自身のネットワークを包括的にスキャンできます。

検出をしたら、次のステップは証明書更新とインストールプロセスの自動化です。これは、NIST の量子に関する推奨のような標準への準拠を維持しながら、時間を節約してリスクを減らす一助になります。証明書インベントリを管理するためのデジサートの検出と自動化について確認してください。

デジサートの耐量子コンピューティングツールキット

デジサートは、NIST が耐量子コンピュータ暗号の標準を設定することの支援に関与してきて、お客様が PQC に対し準備するためのソリューションも作成してきました。デジサートの PQC ツールキットは、ハイブリッドの RSA/PQC 証明書(TLS または IoT)のインストールプロセスを試したい技術者ユーザー向けに開発されています。耐量子アルゴリズムを今すぐ、あるいは将来の取り組みとして調査する予定であるかどうかに関わらず、デジサートは、特定のビジネスニーズを満たす必要があるお客様に対し専門知識を提供し、サポートすることができます。

PQC ツールキットは CertCentral から zip ファイル形式でダウンロードできるので、ツールキットの入手方法の詳細をご覧になるにはデジサートセールスにお問い合わせください。ツールキットには、Linux サーバかワークステーション上の OpenSSL(一般的な SSL/TLS ライブラリ)と Apache (Web サーバ)の耐量子対応バージョンの構築方法、ならびにさまざまなテストを実行するこれらのプログラムの使用方法の手順が含まれます。

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