DV(ドメイン認証)、OV(企業認証)、EV(Extended Validation)― この 3 種類の SSL 証明書の違いを理解するには、証明書とは何かを把握したうえで、デジサートのような認証局(CA)が証明書を発行するプロセスの理解が必要となります。CA とは、Web サイトの所有者の詳細なアイデンティティを確認して TLS/SSL 証明書を発行する、信頼できる第三者認証局のことです。3種類の違いはブラウザのアドレスバーに表示される鍵アイコンをクリックして、表示されるサイト情報を確認することでわかります。
TLS/SSL 証明書には次の 2 つの機能があります。第一に、ユーザーとドメインの間で渡されるデータを暗号化して、Web サイト間に安全な接続を確立します。第二に、当該の URL を所有する企業や個人の所有権とアイデンティティを確認します。現実世界で使われる証明書と同様、電子証明書の基本的な機能は、企業や組織をオンラインで代表する権利を証明することです。
SSL 証明書の種類を示す名前は、証明書を発行する前に実施される認証手順を表しています。ドメイン認証(DV)証明書は URL の所有者を検証するだけの証明書、企業認証(OV)証明書はドメインの所有者を検証したうえで URL に関連するビジネス組織を認証する証明書です。そして、EV(Extended Validation)証明書は、ドメイン所有者、ビジネス組織、および関連事業の法的実体の認証を要件とする、保証度の高い電子証明書です。
DV レベルの認証プロセスはかなり短く、証明書を購入する際にはドメインまたは URL の管理を証明すればよいだけです。これは、CA がドメイン所有者(WHOIS データベースに登録されている)にメールを送信することで確認されます。すぐに証明書が必要な場合には便利ですが、このような一度限りの検証はインターネット上で最低限の標準であり、それなりの信頼性しかありません。
OV 証明書と EV 証明書の違いは、取得する際に必要な検証の層とステップの数が増えていることです。EV 証明書でも OV 証明書でも、CA は、ドメインの所有者のほか、名前、種別、ステータス、住所など、関連事業に関するいくつかの詳細情報も検証しなければなりません。
EV 証明書の場合、企業の公開電話番号、事業の継続期間、登録番号と管轄、ドメイン不正検査、連絡先のブラックリスト検査、申請者の雇用状況を確認するための電話連絡など、7 つの追加手順が必要です。
低い保証から高い保証の証明書まで、Web 利用時に必要なブランドの真正性を、
認証プロセスでどのように見分けられるのかを説明します。
各タイプの TLS/SSL 証明書は、Web サイトが暗号化されていることを証明するだけでなく、証明書の種類に応じた組織のアイデンティティのレベルを顧客に伝えます。
ドメイン認証(DV)証明書は、最低限の アイデンティティ認証を行う SSL 証明書であり、簡単かつ迅速に取得できるので、悪意のあるボットでも取得できてしまいます。企業や個人が、証明書で保護しようとしている対象の Web ドメインを管理していることを証明するだけで済む低コストの証明書です。
DV 証明書を取得する際に必要なのは、Web サイトの所有者が WHOIS レコードどおりのドメインの所有権を持つことをメールで確認するだけです。DV 証明書の場合、鍵アイコンをクリックしても組織の詳細情報は表示されません。DV 証明書は、Web サイトの暗号化に利用できる最低限の製品です。
DV 証明書を使用する Web サイトの例:
企業認証(OV)証明書は、9 項目の認証チェックによって認証され、セキュリティレベルが中レベルのビジネス証明書とみなされます。OV 証明書でも、CA は DV 証明書の場合と同じようにドメインの所有権を認証します。ただし OV 証明書の場合には、鍵アイコンをクリックすると Web サイトを所有している企業の詳細情報を確認できます。
OV 証明書と DV 証明書の違いは、証明書に関連するビジネス組織(Inc.、Corp、LLC、Ltd、Pty Ltd など)が有効であり、良好な状態を維持していることを認証する際に CA が実行する手順にあります。
適している Web サイトやページ:
EV(Extended Validation)証明書は、最高レベルのブランドアイデンティティセキュリティを提供し、認証時には 16 項目の認証チェックが実行されます。EV 証明書の場合には、鍵アイコンをクリックすると Web サイトを所有している企業または親会社の詳細情報をすぐに確認できます。
CA が DV および OV 証明書の場合に行うすべての認証手順に加えて、EV 証明書では、ビジネス組織の運営状況、住所、申請者の雇用状況を確認するための電話連絡などの審査項目が必要になります。
適している Web サイトやページ:
デジサートの認証チームは、毎年およそ 3,750 件の EV 証明書を拒否していますが、その理由の一部は不正なリクエストです。
アドレスバーの鍵アイコンをクリックすると、Web サイトの所有者のアイデンティティを確認することができます。残念ながら、今では多くのフィッシングサイトでも鍵アイコンと DV 証明書が利用されています。そのため、アドレスバーに表示される鍵アイコンをクリックして表示されるアイデンティティ情報を確認することが重要になります。アイデンティティが不十分な証明書(DV)が利用されている Web サイトでは、個人情報を共有したいと思うユーザが減ります。証明書に組織の名前が表示されていれば(OVやEV証明書)、誰を信用すべきかを適切に判断することができます。
欧州連合(EU)は、インターネット上のユーザーの信頼性と真正性を高めるために、オンラインセキュリティ標準の強化を強硬に推進してきました。2015 年には、欧州委員会が決済サービス指令(PSD2)を可決します。決済取引を規制し、ヨーロッパで統合の進んだ決済サービス市場を構築するとともに、決済を安全かつ確実にして消費者を保護するための対策です。PSD2 は 2018 年 1 月に発効し、銀行をはじめとするオンライン決済サービスプロバイダーに対して、適格証明書の使用を義務付けています。法的拘束力を持つ電子署名であり、EV 証明書よりも取得が難しい証明書です。
インターネットが発展し、アイデンティティ保護がオンライン上でますます危うくなるなか、デジサートは認証局ブラウザ(CA/B)フォーラムで積極的な役割を担い、オンラインのアイデンティティ保証強化を提唱しています。正規のオンラインアイデンティティの重要性は、デジタルの世界でも現実の世界と変わらないからです。そして、デジタルにつながった今日の世界では、オンラインアイデンティティが脅かされれば、私たちが目指す公共の信頼性に悪影響を及ぼします。